たかがめまい、されどめまい。 〜めまい各論〜
先月は、めまいの全体像についてでしたが、
今回は、具体的にめまいの種類を見ていこうと思います。
めまいの種類(復習)
前号でも書きましたが、めまいには自分自身や周囲がぐるぐる回っているように感じる「回転性めまい」と、体がフラフラしたり、ぐらついたりする「浮動性めまい」の2つの種類に分けられます。
そして、それ以外にもう一つ、急に立ち上がったりした時に、目の前が真っ暗になる立ちくらみの症状も、めまいと言われることがあります。
めまいはあくまでも症状です。そして、めまい症状があるということは、めまいを引き起こす病気が存在しているはずです。
めまいを引き起こす病気としては、全身、脳、耳、こころに関係するものがほとんどです。
全身からくるめまい
全身性の病気としては、低血圧や貧血、冷え性などがあります。
その背景には、月経過多や月経不順、子宮筋腫などの問題を抱えていることが多く、
他に更年期障害にも、代表的な症状としてめまいがあります。
他にも偏った食生活や誤ったダイエットでの栄養不足もめまいの原因になることがあります。
また、高血圧の治療で使われる降圧剤や糖尿病の薬、
ある種の抗生物質でもめまいを起こすことが知られています。
脳から来るめまい
脳の病気では、充分な血流が脳に行き渡らないことが、めまいの原因となります。
よく知られているのは、一過性脳虚血発作で、この病気はめまい以外に、
片方の手足や顔面のしびれ、麻痺、言語障害などが一時的にあらわれます。
他に脳梗塞や脳出血でもめまいが起こりますが、これらもめまいだけでなく、
しびれ、言葉がでないなどの症状が同時にみられることが多いです。
こういった場合は、様子を見るのではなく、早急に救急車を呼ぶなどして対処しなければなりません。
耳から来るめまい
めまいを起こす耳の疾患では、良性発作性頭位めまい症とメニエール病、それに突発性難聴がよく知られています。
どれも耳の器官の異常ですが、その成り立ちは異なり、治療法も変わってきます。
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症の原因は、内耳にある前庭器官という平衡感覚に関する部位の異常です。
前庭器官の中の耳石(じせき)という炭酸カルシウムが、定位置から動いてしまうことで、半規管(はんきかん)に刺激を与え、めまいを起こしていると言われています。
通常は2週間から1ヶ月で自然治癒することが多いですが、頭の位置を変える度にめまい症状が繰り返し起こり、ひどい場合は吐き気も伴うなど、日常生活に支障が出ることもあります。
病名に良性と入ってはいますが、症状が辛く、医療機関を受診する方が大勢いらっしゃいます。
メニエール病
メニエール病は、内耳にあるリンパ液が増えて、むくみ(浮腫)を起こした病態を指します。
ただ、むくむ原因はよくわかっていません。
めまいや吐き気のほか、耳鳴りや難聴、耳の閉塞感といった症状が現れることがあります。
精神的なストレスが引き金になっているとも言われていて、めまいの持続時間は数十分から数時間と比較的長いのが特徴です。
また再発や、聴力の悪化などもあり、治りづらいケースもありますので、早めの治療が必要です。
突発性難聴
突然、耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の疾患が、突発性難聴です。
40〜60歳代の働き盛りに多くみられ、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などがあると起こりやすいことがわかっています。聴力を回復させるには、早めに治療を開始することが重要です。
発症後すぐ治療を受けないと、難聴や頑固な耳鳴りが残ったり、聴力を失うこともありますので、おかしいなと思ったらすぐに耳鼻科を受診してください。
難聴の発生と前後して、耳の閉塞感や耳鳴り、めまい、吐き気などを伴うケースも多く、耳鳴りで受診したら突発性難聴だったという人もいます。
メニエール病のように繰り返すことはほとんどありません。
こころから来るめまい
最後に、心因性めまいです。
心因性めまいは大きく2つに分けられます。
1つは、耳に異常はなく、心の不調が主な原因になる場合。
もう1つは、もともと耳に異常があって、それに加えて心の不調が影響している場合です。
ストレスを溜め込みやすい方は、繰り返し起こるめまい発作への恐怖感のため、
不安や抑うつ傾向が増し、悪循環に陥ることもあります。
また、前回も書きましたが、めまいは繰り返すごとに頻度が増し進行する傾向があります。
たかがめまいと我慢して放っておかず、できるだけ早めにきちんと耳鼻科を受診して治療をするようにしましょう。
くるみ便りより