耳鼻科で漢方薬が処方される理由

耳鼻咽喉科を受診される患者さまの疾患には、耳では、めまい・耳鳴り・中耳炎・・・、鼻では、鼻炎・副鼻腔炎・蓄膿・・・、咽喉(のど)では、扁桃炎や・上気道炎・咳・のどのつっかえ・・・など、さまざまなものがあります。

治療のためには、病院での処置はもちろん、お薬をのんで頂く機会も多く、薬物治療には特に漢方薬がかかせません。

もともと効果が謳われている漢方もあれば、特殊な使い方をする漢方薬もあります。また、漢方薬には、効果がマイルドなものが多いですが、こと耳鼻咽喉科領域に限って言えば、或る程度以上の効果が早期に期待できる漢方薬も多い印象があります。

このページでは、くるみ薬局で日常的に調剤している漢方薬について、薬剤師の意見も交えて解説しています。

耳鼻科領域で処方されることが多い漢方薬

中耳炎

耳の中は、内耳・中耳・外耳に分けられます。そのうち鼓膜より奥の中耳に感染を起こした状態で、急性中耳炎・滲出性中耳炎・慢性中耳炎の3つの型があります。

急性中耳炎は、ウイルスや細菌の感染により中耳が炎症を起こした状態です。急性中耳炎はウイルスや細菌の感染によって起こり、かぜやアレルギーの合併症としてよくみられます。急性中耳炎は成人より小児に多くみられます。症状と治療は成人でも年長の小児でも同様です。

滲出性中耳炎は、中耳に滲出液がたまった状態です。
滲出性中耳炎は、急性中耳炎が完治していなかったり、中耳と鼻の奥をつないでいる耳管がふさがることで起こります。耳管閉塞の原因としてはアレルギーがよくみられます。滲出性中耳炎はどの年齢層にもみられますが、特に小児に多く発症します。
慢性中耳炎は、中耳の感染が長期化した状態です。

慢性中耳炎は通常耳管の機能障害により引き起こされますが、外傷や中耳の急性感染症でできた鼓膜の穴(穿孔)が治りきらないために生じることもあります。また白い皮膚状の物質の非癌性(良性)増殖物(真珠腫)が生じることもあります。穿孔があってもまったく症状が現れない人もいますが、ときに慢性の細菌感染が起こる場合があります。

十全大補湯

体力を回復したり、病中病後の体調を調整してくれる漢方薬です。

柴苓湯

炎症を和らげ、むくみを取ってくれる漢方薬です。


耳管開放症

耳管が開放されたままの状態になり、耳閉感や自声強聴(自分の声が大きく聞こえる)などの症状が出ます。 この病気は女性に多く、疲れや睡眠不足の状態が続いたり、急に体重が落ちた時に起こりやすくなります。
フワフワしためまいや、低い音が聞き取りにくい、という症状が出たりします。また音楽に関わっている方は、音程がずれて聞こえる、自分の出している音の大きさがわからない、という症状が出たりします。
耳管開放症はストレスが原因になっている場合が多いですが、まだわからない部分が多い疾患の一つです。

加味帰脾湯

体質虚弱な人の貧血、出血および不安、どうき、不眠などの症状を和らげ、虚弱な体質を改善します。


耳鳴り

耳内の雑音で人口の10~15%の方が経験します。
ビービー,りんりん,ごーごー,ヒューヒュー,しゅーしゅーなどと表現され,ときには変化を伴う複雑な音の場合もあります。持続的な耳鳴りは,ごく軽い場合でもいらいらするものであり,しばしば大きな苦痛となります。ストレスは一般的に耳鳴を悪化させるので要注意です。

加味逍遥散

女性の不定愁訴を改善してくれる漢方薬です。

牛車腎気丸

老化に伴う全身の機能低下を補う働きがあります。

釣藤散

血の巡りを良くし、精神的な抑うつ状態を改善してくれる漢方薬です。


めまい

平衡または歩行の困難を伴う運動の誤った感覚で、典型的には,回転(ぐるぐる回るまたは旋回する感覚)ですが,単に片側に引っ張られているように感じる場合もあります。患者さんによっては,自分または周囲が動いていると感じます。症状は急性かつ重症の場合は,悪心や嘔吐を引き起こすことがあり,反復して起こることもあります。

☆良性発作性頭位めまい症

特定の頭位で短時間(60秒未満)のめまいの発作が起こります。吐き気と目の震えが生じることが多い疾患です。耳石という炭酸カルシウムの塊がはがれてその位置が変わることによって引き起こされます。

☆メニエール病

めまい,難聴,耳鳴を引き起こす内耳の疾患です。原因などはまだ分かっていない部分も多くあります。危険因子として,メニエール病の家族歴,自己免疫疾患の既往,アレルギー,頭部または耳の外傷などがあります。20歳から50歳の間の方に多く見られます。

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めまいを緩和するハーブ

めまいを緩和するハーブ・・・

半夏白朮天麻湯

めまい、頭痛、頭重、食欲不振、悪心、嘔吐、手足の冷えなどの症状を和らげます。

苓桂朮甘湯

神経症、いらいら、めまい、どうき、息切れ、頭痛を和らげてくれる漢方薬です。


アレルギー性鼻炎

鼻炎は鼻粘膜の炎症であり,鼻腔のうっ血,鼻汁,および病因によって異なる様々な症状(例,そう痒,くしゃみ,膿汁,嗅覚消失,臭鼻症)がみられます。原因は通常ウイルスですが,刺激物も原因となります。その中でアレルギー性鼻炎は、季節性または通年性のかゆみ,くしゃみ,鼻漏,鼻うっ血,ときに結膜炎をさし,花粉または他のアレルゲンへの暴露によって引き起こされます。副鼻腔のつまりは前頭部痛を引き起こすことがあり,副鼻腔炎はよくみられる合併症です。特に喘息を伴う場合は,咳および喘鳴も起こる可能性があります。

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小青竜湯

アレルギー性鼻炎の鼻水、くしゃみ、鼻づまりやアレルギー性結膜炎のなみだ目などの症状を改善します。

舌下免疫療法

くるみ薬局では、舌下免疫療法でアレルギーの根本治療をされている患者さんが・・・

葛根湯加川きゅう辛夷

通常、鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎などの治療に用いられます。

麻黄附子細辛湯

通常、感冒、気管支炎などの治療に用いられます。


嗅覚異常

嗅覚と味覚の障害は、生命の危険性がほとんどないために、医学的にあまり注目されていません。しかし、このような障害は食事や飲みもの、香りを楽しむ能力に影響し、フラストレーションがたまることがあります。有害な化学物質やガスのにおいに気づく能力が阻害されて深刻な結果をもたらすおそれもあります。ときには嗅覚や味覚の障害が、腫瘍などの重大な病気によって引き起こされていることもあります。
嗅覚は、鼻に生じた変化、鼻から脳へ走る神経に生じた変化、脳に生じた変化などの影響を受けます。嗅覚は味覚にも影響を及ぼすため、かぜを引いているときはしばしば食品の味が正しくわからなくなります。インフルエンザウイルス、ポリープや腫瘍、鼻の感染症、季節性のアレルギー(アレルギー性鼻炎)、喫煙などが嗅覚を阻害することがあります。

当帰芍薬散

女性の不定愁訴によく用いられる漢方薬です。


副鼻腔炎・蓄膿

副鼻腔炎は、副鼻腔の炎症で、多くはウイルスや細菌の感染またはアレルギーが原因です。最もよくみられる症状は痛み、圧痛、鼻づまり、頭痛です。
副鼻腔炎は、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という4組の副鼻腔のどこにでも起こります。必ずといっていいほど鼻腔の炎症(鼻炎)が併発しているため、鼻副鼻腔炎と呼ばれることもあります。短期間に推移する急性副鼻腔炎と、長期にわたる慢性副鼻腔炎があります。

葛根湯加川きゅう辛夷

通常、鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎などの治療に用いられます。


咽喉頭異常感症

のどに何かにかかっている感じで、神経症の方によく見られます。
検査などでは特に異常がみられない場合もありますが、患者さまにとっては不快な症状です。

半夏厚朴湯

のどの奥に物がつまっているような感じを改善します。

柴朴湯

気管支喘息の喘鳴を和らげ、不安感を改善します。


声がれ・かすれ(胃食道逆流症による場合)

声帯の異常により、声が出しにくくなったり、声がかすれたりすることがあります。
さまざまな原因が考えられますが、中には胃酸が逆流して声帯を刺激し、炎症・ポリープなどが生じ、声が出づらくなることがあります。

六君子湯

胃腸の弱い人の食欲不振、消化不良、胃のもたれと痛み、悪心、嘔吐などの症状を和らげ、胃腸機能を改善します。


咳嗽(せき)

せきは空気を突然爆発的に吐き出す動作で、気道から異物を除去する働きをします。
せきは日常的に行っている動作ですが、実際には複雑な反射で、肺と気道を保護する方法の1つです。他の防御機構と同様に、せきをすることで、吸いこんだ粒子から肺を守っています。せきをすると、たんがみられることがありますが、これは、粘液、壊死組織片、細胞などの混合物が肺から吐き出されたものです。
気道が刺激されると、せきがでます。細菌やウイルスによる呼吸器感染症は、気道に炎症を起こすため、せきの一般的原因となります。また、アレルギーも気道に炎症を引き起こします。また、鼻汁がのどに流出したり、ときには気管や他の気道に入ってしまう後鼻漏(こうびろう)が原因で、刺激が起こり、せきを引き起こすことがあります。さらに、胃や食道の内容物が食道から逆流する胃食道逆流症でも、内容物が気管や気道に入って炎症を起こし、せきがでることがあります。

柴朴湯

気管支喘息の喘鳴を和らげ、不安感を改善します。

麦門冬湯

せきを和らげます。


口渇

特定の病気や障害、さらにある種類の薬は、唾液分泌量を減少させ、唾液腺の機能障害による口渇を引き起こすことがあります。
原因となる病気にはパーキンソン病、HIV感染症、シェーグレン症候群、うつ病、慢性の痛みなどがあります。唾液分泌量を減少させる薬は、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、鎮静薬、メチルドパ、利尿薬などです。
しかし、実際には原因が特定できないことも多いです。

白虎加人参湯

体のほてり、口の渇き、皮膚のかゆみなどの症状を和らげます。

麦門冬湯

せきを和らげます。



※注意※医療用医薬品はその医薬品の適応内での使用が原則です。この記事は適応外使用を推奨する目的で書かれたものではありません。