なぜ長引く咳に 吸入薬を使うのか?
風邪を引いた後になかなか咳が止まらず、薬を飲めば一時的には止まるけど、すぐまた咳が出てきて大変な経験をしたことはありませんか?
それに、咳は止めないほうがいいとか、咳が続くと体力が落ちるので止めたほうがいいとか、色んな話を聞いたこともあるかもしれません。
咳には色んなタイプがありますから、このような話は、ある人には正しいけど、ある人には間違っているというのが正解かもしれません。
もともと咳は、気道のどこかに外部から侵入した風邪のウイルスやほこりなどの異物があるとき、その異物を排除しようとして反射的に起こる人間の自然な防御反応です。
なので、異物が排除できれば咳も出なくなるのが正常な状態です。通常、風邪の場合、長くてもウイルスが体の中に生存している数日の間に自然と軽快するはずです。
では、あなたの咳は、なぜすぐに止まらないのでしょうか?
「ゼロゼロタイプ」と「コンコンタイプ」
咳には、「ゼロゼロタイプ」の湿った咳と「コンコンタイプ」の乾いた咳があります。
「ゼロゼロタイプ」は、痰を出すための生体防御としての生理的な咳で、むやみに止めず、気道の分泌を減らす治療を優先的に行います。
「ゼロゼロタイプ」の原因は、副鼻腔気管支症候群、後鼻漏症候群、慢性気管支炎などの病気が隠れていることがありますので注意が必要です。
逆に「コンコンタイプ」は、咳そのものが治療対象で、通常、咳止めで効果が出やすいタイプです。
アトピー咳嗽、咳喘息、胃食道逆流症、咽頭アレルギーなどが原因として考えられます。
咳を1回すると約2kcalが消耗されますから、咳が長引くことで体力が低下したり、睡眠不足になったり、周囲の人たちから嫌な顔をされたりと、大きなストレスになりかねません。
それって咳喘息かも
長引く咳の中でも、特に増えているのが咳喘息です。
咳喘息は、色々な刺激に対して気道が過敏になって、炎症や咳の発作が起こります。
例えば、室内外の温度差や天気、タバコの煙、運動、飲酒、ストレスのほか、ホコリやダニなどのいわゆるハウスダスト、PM2.5が主な発作の要因です。
咳喘息の患者さんのうち、3人に1人は気管支喘息に移行すると言われており、早めの治療が必要です。
そして咳喘息に最も効果的なのが吸入薬です。
吸入薬は、一昔前ですとひどい喘息の人が使うイメージがありましたが、現在は咳を長引かせないための一般的な治療薬として使用されているんです。
吸入薬には色んなタイプのものがあります。
炎症を抑えるステロイド吸入薬、呼吸を楽にしてくれる気管支拡張吸入薬、そしてその両方が配合された配合吸入薬です。
あなたの咳の状態や体質に応じて使い分けることができるので、よりあなたに合った治療が可能になります。
長引く咳に吸入薬が使われる3つの理由
1.長引く咳の根本原因である炎症を抑えてくれる
ステロイド吸入薬は気道の炎症を抑えてくれます。炎症がおさまれば、ちょっとした刺激では咳が出にくい状態に戻っていきます。
2.気管支を広げて、すぐに楽にしてくれる
気管支拡張吸入薬は、気管支を広げて呼吸を楽にしてくれます。即効性があり、早ければ吸入して5分から10分で咳が和らぎます。
3.飲み薬に比べて副作用が少ない
吸入治療薬は、その成分が気道や気管にしか届きません。
体全体に広がる薬の量はごくわずかですから、大きな副作用は起こりにくく、適切に使えばどなたでも安心して使えます。
吸入薬にもデメリットがある!?
咳の治療には欠かせない吸入薬ですが、
- 使い方を間違えると効果が落ちてしまったり、
- しばらく使っていると自己流になったり、
- 吸入後にうがいをしないと声がかすれたり、舌が変色してしまう
などのデメリットもあります。
ただ、吸入薬のデメリットは、薬剤師から吸入薬の使い方の説明をよく聞いてもらえれば、ほとんどの場合未然に防ぐことができます。
くるみ薬局にも時々、「使い方がわからなくなったから教えて欲しい」と来られる患者さんがいらっしゃいますが、少しご説明するとすぐに使えるようになっていただけています。
もし、吸入薬の使い方がわからなかったり、不安がある場合は、くるみ薬局の薬剤師にお気軽にお尋ねください。また、ホームページにも吸入薬の使い方の動画を載せていますので、ちょっと使い方を忘れたなと思った時は動画で確認しましょう。
長引く咳のセルフチェック
□ 天気によって、咳がひどくなる
□ 夜間(深夜・寝入りばな)に咳が出る
□ 明け方に咳が出る(咳で目が覚める)
□ 冷たい空気に触れると咳が出る
□ 会話中に咳が出る
□ エアコンの風に反応して咳が出る
□ 湯気に反応して咳が出る
□ 咳が出るとなかなか止まらず、出ない時は全く出ない
□ 階段の上り下りや少しの運動で息切れがする
□ 同世代の人と同じペースで歩くのが辛い
□ 呼吸がぜいぜい、ヒューヒューする
チェック項目が1つでもあれば、風邪以外の病気の可能性があります。また、咳の種類にかかわらず、2週間以上続いたり、出始めて間が無くても、眠れないほどの咳が出る場合は、早めに受診することをお勧めします。
放っておくと喘息を発症したり、大きな病気の発見が遅れることにもなりかねません。あなただけでなく、あなたのご家族やお知り合いの方も、咳が続いていらっしゃれば、早めに受診してもらって下さいね。
くるみ便りより